明治大学大学院農学研究科環境バイオテクノロジー研究室の片山德賢(博士後期課程1年)、小山内崇(准教授)らの研究グループは、モデルラン藻のアルギニン生合成の最終段階であるアルギニノコハク酸リアーゼという酵素がアルギニンによって阻害されることを発見しました。
本研究グループは、ラン藻の一種であるシネコシスティス 注1)のアルギニノコハク酸リアーゼ( SyArgH)を精製し、生化学的性質を調べました。さらに、同じラン藻の中でも糸状性のスピルリナ 注2)、窒素を固定する能力のあるノストック 注3)というラン藻のArgH( ArArgH, NoArgH)の生化学的性質を調べました。その結果、 SyArgHや ArArgHは、 NoArgHよりも活性が低いことが分かりました。また、ラン藻のArgHは、アルギニンにより、阻害されることが保存されていました。また、アルギニンによる阻害は、pHによって変化する事も分かりました。しかしながら、アルギニンと構造が似ているリジンというアミノ酸では阻害をほとんど受けず、アルギニンによる阻害は、特異的であることが分かりました。
このように、本研究グル-プは、3つのラン藻のArgHの性質を明らかにし、窒素を固定するシアノバクテリアのArgHが高い活性を持つことを発見しました。また、アルギニンによる阻害が3つのシアノバクテリア目に保存されており、pHによってその阻害が変化することを明らかにしました。
注1)シネコシスティス
株名: Synechocystis sp. PCC 6803。最も広く研究されている淡水性、単細胞性のラン藻。増殖が速く、直径が約1.5マイクロメートルの球形をしている。窒素固定を行わない。1996年に、ラン藻種の中で最初に全ゲノム配列が決定された。相同組換えによる遺伝子の改変が可能であり、凍結保存が可能であるなどの利点を有する。
注2)スピルリナ
株名: Arthrospira platensis NIES-39。窒素固定を行わないラン藻で、糸状体がらせん状に巻いた形をとっている。塩湖から単離されたラン藻であるため、好塩性で好アルカリな形質を有している。健康食品や食用色素の材料として産業的に用いられている。
注3)ノストック
株名: Nostoc sp. PCC 7120。細胞が数珠上につながっている糸状性の形態を持つ。窒素欠乏時に、ヘテロシストと呼ばれる窒素固定に特化した細胞を形成する。窒素固定や細胞分化に関する研究のモデル生物としても扱われている。
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