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応用生化学研究室
Laboratory of Applied Biochemistry

担当教員: 島田 友裕 専任講師/博士(工学)

<研究略歴>

2008年法政大学大学院工学研究科物質化学専攻博士課程修了。
法政大学マイクロ・ナノテクノロジー研究所 博士研究員、
東京工業大学 資源化学研究所 助教を経て、2017年より現職

<主な担当科目>

生化学、応用生化学、生化学・物理化学実験

<研究室所在>

第一校舎3号館3階308号室

研究テーマ

「遺伝子発現の仕組みの解明から、生物の仕組みの理解・応用を目指しています」

生物は環境変化や生育に応じて遺伝子を使い分けており、生物を理解し応用するためには、その分子機構を解明する必要があります。近年の科学技術の進歩により、生物が持つ遺伝子セット(ゲノム)の決定は容易となりました。これにより、従来のような「生物が何の遺伝子を利用したか」という現象から解析するのではなく、「生物がどのように遺伝子を利用するか」という分子機構から生物を解析することが可能となりました。現象には無数の要因が関与していること、そして、それらの因果関係が複雑なため、現象を基盤とした本質的な分子機構の理解には壁があります。

現代では、ゲノム情報を利用して生物を構築している因子の全体像を把握することができます。そして、それらを個々に取り出して生化学的かつゲノムワイドに解析することで、生物の本質的な理解・応用が可能となります。そこで当研究室では、生物が持つ遺伝子を利用する仕組みを理解する事、すなわちゲノム転写制御機構の全体像の解明から生物を理解することを目指しています。

私たちは、生物の仕組みを理解するために、1つの生物としては個々の遺伝子機能の知見が最も蓄積している大腸菌をモデル生物として研究を行っています。発現させる遺伝子の選択や強度は、転写制御因子により調節されています。大腸菌の持つ約4,500個の遺伝子は、そのうちの転写制御因子約300種類によって制御されています。それぞれの転写制御因子が環境変化に応じて自身の活性や量が変化させることで、それぞれの役割に応じた遺伝子群を制御し、細胞の環境応答を可能としています。

大腸菌の持つ転写制御因子は約300種類ありますが、ゲノムを対象とした解析がなされたのはごく一部です。これら全ての機能をゲノムワイドに解析するために、私たちは下に示すGenomic SELEX法 (gSELEX法)という解析手法を開発しました。

 

試験管の中で転写制御因子と断片化されたゲノムDNAを混合し、形成した転写制御因子-DNAの複合体を精製し、そのDNAの塩基配列を分析することで、転写制御因子の直接的なゲノム上の結合領域を同定する方法です。また、他因子が存在しない条件下であるため、因果関係が明確な事が強みです。結合領域から制御下遺伝子群を同定することができますので、その転写制御因子のゲノム転写制御ネットワークにおける役割を明らかとすることができます。この手法を用いて、転写因子やシグマ因子の標的遺伝子を解析し、その新規機能を明らかとしています。以下は解析例です。

この例のように、ほとんどの転写因子は複数の遺伝子を制御することで、転写制御ネットワークを形成していることが分かってきました。転写因子の直接的な支配下遺伝子群をゲノム全体から同定することができるため、分子機構に基づいた本質的な理解へとつながります。また、転写因子が感知する刺激や化合物に対し、生物がその変化に応答するために用いる遺伝子(群)を特定することが可能です。

本手法を主軸に、ゲノム転写制御機構におけるすべての転写制御因子の機能を解明し、終局的には1つの生物丸ごとの遺伝子発現機構の理解を目指しています。これらの知見を細胞システムの分子機構の理解に役立てる事で、原理に基づいた本質的な応用を目指しています。

 

・研究室メンバー:学部4年6名;学部3年6名

 

キーワード:Genomic SELEX (gSELEX)、転写制御、転写因子、ゲノム、大腸菌、RNAポリメラーゼ、シグマ因子、転写制御ネットワーク、遺伝子発現

MEIJI NOWでの研究室の紹介ページ

研究業績

  • Shimada, T., Yamamoto, K., Nakano, M., Watanabe, H., Schleheck, D and Ishihama, A.
    GRegulatory role of CsqR (YihW) in transcription of the genes for catabolism of the anionic sugar sulfoquinovose (SQ) in Escherichia coli K-12.
    Microbiology. 165, 78-89 (2019)
  • Shimada, T., Ogasawara, H. and Ishihama, A.
    Genomic SELEX screening of regulatory targets of Escherichia coli transcription factors. 
    Methods Mol Biol.
     1837, 49-69 (2018)
  • Yoshida, H., Shimada, T. and Ishihama, A.
    Coordinated hibernation of transcriptional and translational apparatus during growth transition of 
    Escherichia coli to stationary phase. 
    mSystems.
     3, e00057-18 (2018)
  • Shimada, T., Ogasawara, H. and Ishihama, A.
    Single-target regulators form a minor group of transcription factors in Escherichia coli K-12.
    Nucleic Acids Res. 46, 3921-3936. (2018)
  • Yamamoto, K., Yamanaka, Y., Shimada, T., Sarkar, P., Yoshida, M., Bharadwaj, N., Watanabe, H., Taira, Y., Chatterji, D. and Ishihama A.
    Altered distribution of RNA polymerase lacking the omega subunit within the prophages along the Escherichia coli K-12 genome.
    mSystems. 3, e00172-17. (2018)
  • Shimada, T., Momiyama, E., Yamanaka, Y., Watanabe, H., Yamamoto, K. and Ishihama, A.
    Regulatory role of XynR (YagI) in catabolism of xylonate in Escherichia coli K-12.
    FEMS Microbiology Letters. 364, doi.org/10.1093/femsle/fnx220. (2017)
  • Shimada, T., Tanaka, K. and Ishihama, A.
    The whole set of the constitutive promoters recognized by four minor sigma subunits of Escherichia coli RNA polymerase.
    PLoS ONE. 12, e0179181. (2017)
  • Sugino, H., Usui, T., Shimada, T., Nakano, M., Ogasawara, H., Ishihama, A. and Hirata, A.
    A structural sketch of RcdA, a transcription factor controlling the master regulator of biofilm formation.
    FEBS Letters. 591, 2019-2031. (2017)
  • Sugimoto, R., Saito, N., Shimada, T. and Tanaka, K.
    Identification of YbhA as the pyridoxal 5′-phosphate (PLP) phosphatase in Escherichia coli: Importance of PLP homeostasis on the bacterial growth.
    J. Gen. Appl. Microbiol. 63, 362-368. (2017)