根寄生雑草は、他の植物の根に寄生して、水や養分を奪いとって生育する植物です。アフリカなどの地域では、魔女の雑草とも呼ばれる「ストライガ」が農地に侵入し、甚大な農業被害をもたらしています。日本では、農業被害の報告はほとんどありませんが、「ヤセウツボ」という名前の根寄生雑草が様々な地域で生育しています。ヤセウツボは外来種であり、現在自然界で生育しているものの多くは、クローバー等の雑草に寄生しており、大きな問題にはなっていませんが、いずれ農地に侵入する可能性も懸念されます。今回、植物制御化学研究室の竹井沙織(博士前期課程2年在籍)、内山雄太(博士前期課程修了)、瀬戸義哉准教授らの研究グループは、アメリカ・ソーク研究所のMarco Bürger博士、Joanne Chory教授らとの共同研究により、ヤセウツボが、周囲に存在する寄生する相手となる植物を認識する際に必要な受容体タンパク質を特定しました。ストライガやヤセウツボは、いずれも、寄生する相手の根から分泌される、ストリゴラクトン、と呼ばれる分子を認識して発芽するという独自の発芽システムを有しています。今回、研究チームはヤセウツボが有しているKAI2d3と名付けられたタンパク質が、非常に低濃度のストリゴラクトンを認識して、発芽を促すことが可能な受容体であることを突き止めました。すなわち、本受容体を利用することで、ヤセウツボが効率的に寄生する相手を認識して寄生を成立させていると考えることが出来ます。今後は、本受容体を標的にした化学ツールの探索などさらなる研究の進展が期待されます。本研究成果は、日本植物生理学会が発行している国際学術誌Plant and Cell Physiology誌に掲載予定で、既にオンラインで公開されています。
論文はこちら
https://academic.oup.com/pcp/advance-article/doi/10.1093/pcp/pcad026/7123804?login=true
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https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2023/mkmht00000081972.html
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