HTL/KAI2は、煙由来の植物種子発芽誘導分子であるカリキンの受容体として見つかった加水分解酵素ファミリーに属するタンパク質です。本タンパク質は、カリキンだけではなく、まだ見つかっていない内在性の未知ホルモン分子の受容体としても機能することが示唆されています。今回、植物制御化学研究室の岡部聖真(博士前期課程2年在籍)、鈴木泰輝(博士前期課程2年在籍)、来馬道生(博士後期課程1年在籍)、瀬戸義哉准教授らの研究グループは、HTL/KAI2受容体に対して特異的に作用する新たな分子として、desmethyl Germinone(dMGer)を設計・合成しました。モデル植物であるシロイヌナズナの種子は、高温条件においては、発芽が顕著に阻害されます。これは、発芽誘導作用を有するホルモン分子であるジベレリンの合成が抑制されることが大きな原因です。一方、今回合成したdMGerは、高温条件で阻害されたシロイヌナズナの種子発芽を強力に誘導することに加え、この作用は、ジベレリン非依存的に起きることが明らかになりました。すなわち、dMGerは、ジベレリン機能の低下により、発芽能が低下した種子の発芽を誘導できる新たな化学ツールとしての利用が期待されます。また、HTL/KAI2経路を介した植物生長制御メカニズムを解明するために新たな化学ツールとしても有用です。
本研究は、岡山理科大学福井康祐講師、北岡花奈(岡山理科大学博士前期課程在籍)、京都大学山口信次郎教授、理研萩原伸也チームリーダーとの共同研究成果として発表しました。
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https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X23001390
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